拙著『ネ☆コーチング』のこと

こんにちは。栗原貴子です。


 2週間ほど前、JR山手線の品川駅のホームで、拙著『ネ☆コーチング』の担当編集者氏にバッタリ遭遇した。名古屋方面への出張からの帰りで、新幹線が品川駅に到着したとき帰宅ラッシュアワーだった。しかも山手線がかすかに遅延していてホームは大混雑。やってきた電車にはキャリーバッグを持った私が入り込む隙間がなく、次の電車にしようと少しでも空いている場所に移動した。

 フリーランス歴が長いため、満員電車のお作法がよくわからないので、たまに満員電車に乗るとベテラン勢から『ちっ』と舌打ちされる。『このオバはん、旅行帰りかよっ』という心の声が聞こえてくるが、残念でした。オバはん、こう見えても出張なのである。「人を見た目で判断してはいけない」という小学校時代の教えは、大人になるときれいさっぱり忘れられがちな教えのひとつだ。

 毎日がカジュアルデーなオバはんは、お姉さんの頃から「ちっ」と舌打ちされてきたので学んだ。満員電車はアウエーだ。だいたい、お姉さんの頃から満員の電車でちかんに遭遇しては、痴漢を泣せてきたりとロクなことはない。山手線は3分に一本のペースで電車が走っているのだから、2~3本見送ったところで問題ないのである。


 さて、いよいよ、私が「乗れそうだ」というぐらいにスペースが空いた電車がホームに入ってきた。と、そこで電車から降りてきた人に「ポン」と肩を叩かれた。それが、担当編集者氏だったのである。

 4年ぶりぐらいの再会である。

 この人に私はとてもお世話になったのだが、とんとご無沙汰をしていた。ホームでの立ち話で彼は言った。

「栗原さんには、また『ネ☆コーチング』のような本を書いて欲しいと思っているんです」

 『ネ☆コーチング』は、しゃべる猫、ミヤコの”コーチング”によって、アラサー女子が「自分らしいシアワセ」を見つけていくというストーリーの小説仕立ての自己啓発本だ。大変、よくできたと自分でも思うし、実際、読んでくださった方の評判もよい。

 だが、「次回作も!!」とはならなかった。

 売れなかった、のである。

 評判は上々、なのに売れなかった、次回作もなし、というのは物書きにとっては心が折れる出来事である。御多分に漏れず、私の心も折れたし編集者氏の心も折れたことだろう。もはや、いいものを作れば売れるという時代ではないにせよ、私たちのガラスのハートにはヒビが入ることとなった。

 自分で書いた『ネ☆コーチング』を読んで自分を癒すことも試みたが、読めば読むほど「おもしろい」ので自分で自分の傷に塩を塗りこめる結果となり、あまり回復の手助けにはならなかった。

 『ネ☆コーチング』を書いているとき、私には、じつは一点だけ気がかりなことがあった。

 私は猫という生き物に接したことがほとんどなかったのである。

 小学生のとき、クラスメイトのT君のおうちに猫を見にいき、「かわいい~」とそのフサフサの毛を堪能しようと頬ずりしたところ、顔が真っ赤になって呼吸困難になった。猫アレルギーだと判明した。以来、「かわいいアイツら」は私にとって危険生物ということで、あまり近寄らないようにしていたのだ。

 

 そんな私であるが、2012年の夏、仔猫を4匹も拾ってしまい養育することになった。はじめての猫。しかも乳飲み子を4匹というハードルの高い養育であったが、この猫を拾った場所は、当時、私が部屋をお借りしていた編集者氏のお父上所有のアパートだった。

 その養育経験はまさに『リアル ネ☆コーチング』であった。

 命あるものを育てるということ。

 自分の養育にこれらの命のすべてがかかっている、ということへの責任。

 生きよう、とする本能の力強さ。


 人間が気にする「世間体」をはじめとする、さまざまな価値観がいかに意味のないものであるかを、私は猫たちに教わった。人間の都合でたまたま「野良猫」とカテゴライズされているだけ、ということに人間のエゴを感じた。


 しかし、情けなくも私はアレルギーであった。

「命に関わるので気を付けなさい」と医師に言われ、発症におびえつつ「本当はあなたは、猫に触ってもいけません。念のための薬を処方します」と病院で厳重注意を受けながらの養育であったが、仔猫たちはものすごく可愛くて触りまくっていた。医師から「お酒を控えるように」と言われているけれど、つい飲んでしまうお酒好きの人の気持ちを生まれて初めて知った。

 猫の生態を知らずに書いた『ネ☆コーチング』を『リアル ネ☆コーチング』の後に反省したのは、猫の魅力をもっと書けたのに、ということだった。


 この、クネクネとした動き。きまぐれな感じ。ツンデレなのだけど、案外、情が深い感じが書けていなかった……。百聞は一見に如かず、であるが、経験していないことを想像で書くのには限界がある。

『ネ☆コーチング』の編集者氏と私と「猫」との縁にも驚くが、さらに驚く偶然がある。

私が猫アレルギーであると判明したときに訪れていたT君と編集者氏の名字が同じ、なのである。

 そんな縁ある苗字の編集者氏とのバッタリの再会で、確かに思った。

『今の、私ならもっといいものが書ける』と。


 しかし、アレだ。

 一度、「売れなかった」著者には「あの人の本は売れない」というレッテルが貼られる。どの本が、どれだけ「売れた」かは他社の本であっても、一目瞭然の時代なのだ。

 っていうかさ、「売れる売れない」には、書店営業さんのお力とか、宣伝力とか、”大人の諸事情”とか、いろいろなファクターがあるんだけどね。

 つまりね「書く力」があっても、それだけでは「売れる本」にはならないのである。

 編集者氏との品川駅ホームでの立ち話で、彼は言った。

「ブログで書けませんか?」と。

 書いてみようかな、という気持ちには、正直なところその時点ではなれなかった。

 でも、2週間ほどの間、考えて「書いてみようかな」という気持ちが芽生えつつある。「売れなかった著者」が再び本を出版するには、今の時代には「ネットを味方につける」という方法がベストなのだと納得できたから。

 ということで、今、ツラツラと構想を練っております。


『ネ☆コーチング』は我ながらよく書けています。

なので、もし、ご興味ありましたら

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よろしくお願いいたします!

栗原貴子のでこぼこオンナ道

栗原貴子/編集・ライター、コピーライター フリーランス歴23年。広告、宣伝、啓蒙につながるクリエイティブ制作、コピーライティングが得意。2019年より きもの伝道師 貴楽名義で着付けパーソナルレッスンを中心に活動開始。きもの歴は四半世紀越え。