【今年もありがとうございました!】2020年大晦日、煮豚を作っておりました

帰省に縁のない都会っ子なので、お盆や正月に友達がみな「帰省する」ことに、一抹の寂しさを覚えていた。今年は多くの人が帰省をしていないが、人との接触がはばかられる時節柄。とりたてて「寂しい」とも思うこともなく、ひとり遊びの計画で頭がいっぱいである。


ひとりでのんびり過ごすことは、なんの問題もないが食糧の確保は必須である。30日、スーパーに出かけた。


行儀よく陳列されている緊縛済みブロック肉を眺めていたら、どういうわけか、唐突に『煮豚を作ろう』と思い立ったのである。


作ったことないのに。


料理のレシピなどググれば出てくるこの時代。レシピ本を所持していなくても、心配ご無用だ。その場で必要な材料をググって、ニンニクやショウガ、長ネギなどもカゴに入れた。重い。みかんも買いたいし、ウィルキンソンも欲しいのに。『お餅は500gでしょ、みりんが300㏄だし、肉はこれ300gぐらいかしら?』と重量を暗算してみたら、すでに5㎏ぐらいになっていた。しかも、卵は売り切れている。明日、また出直そう、と思った。


スーパーは混んでいたが、これまでの年末のスーパーでよく見かけた、謎に団体できている家族連れが売り場にいなかった。コロナ禍によって「代表者のみ、売り場に入場するシステム」が普及し、混雑が予想される年末は、スーパー側もより一層、「代表者のみにしてください」と啓蒙に力を入れているからだろう。


「お母さん、ほらおいしそうなマグロが安いよ」

「安いって、いつもいくらするか知らないくせに!」

「・・・・・・」


と「普段、家事をしていないことが露呈し、おねだりに失敗するお父さん」もいない。若いお父さんたちは「代表者」として売り場で奮闘している。メモも見ずにテキパキと商品をカゴに入れている様子から、いつも家事に親しんでいることが見て取れる。


ペアで売り場にいるのは、高齢のご夫妻だ。たいていが仲睦まじく、お互い、助け合って買い物をされている姿は微笑ましい。しかし、「柚子なんか、いらん!」と奥様にやたらと威張り散らしているジジイもいて、私の不況を買った。『柚子を入れればなんでもお正月風味になるんだよ!』と心の中で罵倒した。


レジを済ませてスーパーを後にしようとして、ふと気づいた。60代と思しきオジサマたちが、5~6人、立ちすくんでジーとこちらを凝視しているではないか。『そういうユニットか何か?』というぐらいに、服装もなんとなく似ている。いわゆる「ユニ被り」ってやつか。もはや、制服である。


真剣なオジサマたちの眼差しは何かに似ている。


そうそう。コンビニなどの前でリードをくくられて「ちょっと待っててね」と店内に入った飼い主を待っているときの犬と同じ瞳だ。飼い主が入っていったコンビニの自動ドアを必死に見つめ、出てきたのが別人だと気づいて落胆するを繰り返す、愛すべきワンコたちのようなユニ被りのオジサマたち。


ひとりのオジサマが一歩、前に歩み出た。飼い主、もとい、奥様がレジを済ませて出てきたのだ。奥様が下げている、パンパンのエコバック2つを受け取って「あった?」と聞くオジサマ。「あったよ。良かったね」と奥様。歩き出す二人を、待機中のオジサマたちが横目で見送っている。その様子もまた、飼い主が出てきたワンコのよう。なんだかな。


買ったモノを詰め終わった袋を肩にかけ、オジサマたちの前を通る。というか、オジサマたちの前を通らなくては店外に出られないのだ。さほど広くないスーパーでは、ちょっと邪魔だった。ニトリに通じてるこっちの通路で待ってればいいのに。


そして、私は大晦日に煮豚を作った。簡単、時短というレシピもある中で、あえて「2時間ぐらい煮込むといいですよ」というのを選んだ。今、味をしみこませ中。出来上がりは明日のお楽しみ、である。


夕刻、再び、スーパーへ。昨日よりも混んでいたので、みかんと、小豆とちんげんさいを買って早々に退場した。煮豚に気を良くして、小豆からぜんざいを作ろうと思ったのだ。ウイルキンソンや今晩の食事など別のスーパーで買い、籠城の準備は万全である。


それにしても。


食事を「作る」のって、ほんと、大変である。年末年始のお休み中だからできることであり、普段の私にはここまでのことは、到底できない。煮豚やお雑煮など、メニューこそ「お正月な感じ」であるが、タスクとしては平素もほぼ変わらないのだ。


その証拠に、今日は煮豚に夢中になってしまったので、今晩の食事は「カレーうどん(冷凍)」に決定した。


多分、これからは「時間をかけて料理をする」ということの価値が変わっていくんだろうな、と思う。一種の娯楽、スペシャルなこととしてその過程を「楽しむ」ものになり、非日常化するはずだ。若手の夫属が単身でスーパーに行き、代表者として買い物をする姿も、数年後には都市部では当たり前の風景になるだろう。そして、忠犬のごとく、レジを終えて出てくる妻を待つ夫、というのも「昔、そういう人たちいたよね」と懐かしがられる存在になるだろう。


家族で手分けをして家事を済ませ、夫婦がそれぞれに主体性を持って子育てをする。「家事を手伝う」などという発言はもちろん、概念も過去の遺物となるに違いない。


いろいろあった2020年は、そんな未来に向かって前進するための年であった、と後に語られることを切に願っている。


ということで。

こうして無事に大晦日を迎えることができ、煮豚も多分、おいしくできたであろうことに感謝しております。

よい年をお迎えくださいませ!


今日も読んでくださってありがとうございました。

みなさまの毎日にププッと笑顔があふれますように♪

「顔に合うマスクがない」とFBでぼやいた私に、「高学年女子用に作ったマスクのおすそわけ」とリアル小学生時代からの友達、くーちゃんが送ってくれた手作りマスクでおめかしをしてスーパーに出かけました。くーちゃん、大事に使ってるよ! ありがとうね♪


栗原貴子のでこぼこオンナ道

栗原貴子/編集・ライター、コピーライター フリーランス歴23年。広告、宣伝、啓蒙につながるクリエイティブ制作、コピーライティングが得意。2019年より きもの伝道師 貴楽名義で着付けパーソナルレッスンを中心に活動開始。きもの歴は四半世紀越え。