セラピードッグのヨーゼフ(仮名)を撫でまわし、アルムおんじのプロフィールに衝撃を受ける

こんにちは。栗原貴子です。


外国みたい! と思って撮影したけれど、こうしてみるとやっぱり日本だった。東京・日比谷です。ロマンティックが溢れていますが、ロマンティックとして活用している人が皆無でロマンティックの無駄遣いが印象的。


駅前でセラピードッグが募金と周知活動をしているところに遭遇したことがある人は多いと思う。私は、遭遇するたびにセラピードッグを撫でまわして募金をしている。


昔、フィレンツェでいわゆる「ホームレス」の人が犬と一緒に「お金をください」的な手書きプレートを掲げて道端で座っているのを目撃した。しかし、その犬はボーダーコリーだった。犬種に詳しい私は、直ちに「ホームレスが飼っている犬じゃない」と気が付いた。血統書付きの犬だからというのではない。そういう犬を捨てる輩もいる。このホームレスが連れていたボーダーコリーはやたらとキレイだったのである。犬のお手入れ具合はひと目でわかるが、あのボーダーコリーはしつけもされていたし、毛艶もよく健康そのものであった。それは、日ごろお手入れをされて、いいものを食べているという証拠なので、あのホームレスはニセモノに違いない、と思った。しかし、なぜ、血統書付きの犬を伴ってホームレスのフリをするのだろうか。謎である。



そんな体験があるので「犬」と「募金」の組み合わせにはつい、警戒の眼差しを向けてしまうのだが、私は犬が大好きだ。「触ってください」と言われればぜひとも触りたい。

だからセラピードッグがいるときは必ず、撫でる。


以前、彼氏連れのギャルがセラピードッグを撫でて「癒された~💛」とその場を立ち去ろうとしたときに、耳にピアスを5~6個つけたブリーチ金髪の彼氏が


「お前、癒されといて

募金しねーのかよ。

最低だな」


と言っていて、私は金髪&ピアスの彼氏に惚れた。彼女は「だって~」と言っていたが、あのカップルはその後どうなったのだろうか。


先日、打ち合わせの帰りにセラピードッグに遭遇した。

セントバーナード、ボルゾイ、柴犬のトリオ。


セントバーナードといえば、名作アニメ『アルプスの少女ハイジ』に出てくる遭難救助犬のヨーゼフである。雪山で遭難したからといって、そうそうお目にかかることはできない犬種だ。テンションが高まる。セラピードッグのセントバーナードをヨーゼフ(仮名)としよう。ヨーゼフはあたりまえだが、かなりの巨体だ。体重は70㎏あるという。耳はたれ耳なのだが、1枚が私の手のひらよりも大きい。


ヨーゼフ、でっかいけれど仕草は小さいワンコと変わらない。撫でるとおなかを見せてくれたのでオスと言うことも分かったが、あまりにもビッグでビックリした。


このヨーゼフ、雄犬らしく「甘えん坊」であり、やきもちをやくのである。ボルゾイもそうそうお目にかかれない犬種ゆえ、私の興味はそちらにもあるのだが、ボルゾイを撫でると「でーん」とヨーゼフが頭突きで邪魔をしてくる。ボルゾイは女子なので『あんた、アホじゃないの?』という冷ややかなまなざしでヨーゼフを見る。


ヨーゼフを触りまくった私は、地面においてあった募金箱にお財布の中の小銭をすべていれた。紙幣だと音がしないが、小銭だと「募金してますよ感」が演出できる。我ながら『ちっちぇえオンナだな』と思うが、あえてチャリチャリと音を出すのは、犬を撫でるだけ撫でで、しかも写真まで撮って募金をしない人たちへの「募金しろよ」啓もうの意味も込めている。


地面に置かれた募金箱に募金して立ち上がると、ヨーゼフが大きなお顔をぬっと動かし、鼻先でくいっと募金箱を私の足元に押しやった。


「もってけ」


と言っているかのようである。


「くれるの?」と聞くとヨーゼフは「それ、ツケマ?」っていうぐらいに予想外に長~いまつげをシバたたせながら「どうぞ」という顔をした。


「ありがとうね。

でも、このお金は

みんなのだからね。

もらえないよ」


と辞退したものの、「さすがセラピードッグ!」と感動した。


ボルゾイと柴犬、そしてヨーゼフを順番に撫で「バイバイ」をした後、百貨店のトイレに向かう。手を洗うのだ。私は動物アレルギーなのだ。毛の生えた生き物を触ることへのドクターストップが出ているのである。


しかし、私はヨーゼフを撫でまわすことができて、とっても幸せであった。『アルプスの少女ハイジ』を視聴していた幼稚園児の頃からの憧れのセントバーナードである。


そして、今、私はショックを受けている。


ハイジの

おじいさん

アルムおんじは

「元傭兵」

という設定

ということを、ある人が教えてくれたのだ。


辺鄙なところで暮らし、村人との折り合いも悪く、人嫌いで怖いくらい無口というキャラクターに合点もいくが。アルプスの山小屋でほとんどサバイバルな生活を送り、遭難救助犬のヨーゼフと暮らしているということは、アルムおんじは「いざというときに出動する構え」なのである。年齢(70歳と言う設定らしい)のわりには屈強な肉体であることにも納得である。


けれど。

元傭兵というプロフィールは無邪気にハイジを見て育った私を動揺させた。


この動揺を再び、ヨーゼフ(仮名)を撫でまわすことで落ち着かせたい気分である。









栗原貴子のでこぼこオンナ道

栗原貴子/編集・ライター、コピーライター フリーランス歴23年。広告、宣伝、啓蒙につながるクリエイティブ制作、コピーライティングが得意。2019年より きもの伝道師 貴楽名義で着付けパーソナルレッスンを中心に活動開始。きもの歴は四半世紀越え。