浴衣着て、夕暮れ時の街を歩けば。
オリンピックの開会式に誕生日を持っていかれた恨み、というわけではないがオリンピックが終わってうれしい。何がうれしいって、Wi-Fiが元に戻ったことだ。みんなネットでオリンピックを視聴していたのだろう。
無線はてんでダメ。有線にしても、オンラインミーティング中に「インターネットが不安定です」というテロップがしばしば出てきて、私はしょっちゅう「固まって」いたらしい。
オリンピックが終わってインターネットがサクサク動くことがうれしかったので、今日は浴衣を着ることにした。
クーラーの効いた室内でも冷えすぎないので浴衣は大変、おすすめである。
浴衣を着るときは、手ぬぐいと腰ひもで作った「伊達腰紐」を使っている。浴衣と手ぬぐいが「綿」同士なので、生地同士がしっかり固定されるため、着崩れにくい。
そろそろ、日が暮れるかなという頃合いを見計らって、食料品を買いに出かけた。台風の影響で少し、風が強くまったく暑さを感じなかった。
和装のときは、どんなに頑張っても歩幅はいつもの半分である。ゆっくり歩いてスーパーに行き、買い物をしての帰り道……。風がかなり強くなっていた。
はだける裾を右手で押さえ、左肩にエコバックを下げ、左手にカゴバックを持ってゆっくりと歩いた。裾がはだけたところで、ステテコが見えるだけあるが、人さまのお目汚しに対する羞恥心はまだ、かすかに持ち合わせている私である。
髪が、乱れているのは分かっていた。
今日はピシッとアップにはせず、今風にゆるっとアップにしたのである。無風の家ではイイ感じであったが、ゆるっとアップは強風にはめっぽう、弱い。
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
与謝野晶子の「みだれ髪」とは趣の異なる方向性で、髪が乱れていることは鏡を見なくても分かった。手で撫でつけたいが、両手がふさがっている。右手を裾から離したら、ステテコ版マリリンモンローである。
家路を急ぐが、あいにく、歩幅はいつもの半分だ。
家が、遠い――。
びゅうびゅうと風に吹かれながら、家の方角に角を曲がるとパタッと風がやんだが、途端に蒸し暑さが襲ってきた。自由になった右手でおもむろに、マスクを外し、ふう、と息を吸う。「私、マスクは持っていますよ。一時的に、今、外しただけですよ」をすれ違う人々にアピールすべく、右手に持ったマスクをひらひらさせながら帰宅した。
手を洗おうと、洗面所に行き鏡を見て驚愕した。
みだれ髪どころの騒ぎではない。
四谷怪談であった。
こんな姿で街を彷徨っていたのか、私は。すれ違った人々に「キャー」と言われなかったのが奇跡である。ステテコモンローになってはならない、と気にしていたが、お岩さんになっていたとは盲点であった。
手を洗い、塗れた手で髪をなでつける。あら、びっくり。フツーになった。浴衣を着て、ゆるくアップにした髪に強風を当てて乱れさせれば、あっという間に幽霊のヘアアレンジができる、という新発見。髪がほとんどの印象を決めている、といっても過言ではない。
買ってきた食料を冷蔵庫に入れようとして、また、びっくりした。
見知らぬ食べ物を発見したのだ。しかし、10秒ぐらい考えて気が付いた。それは昨日の私が今日の私のために購入した成城石井のお惣菜であった。自分で自分に「サプライズ!」ができるようになるとは。私もなかなか、エンターテイナーである。
今日も読んでくださって、ありがとうございました。
みなさんの毎日がププッと笑顔であふれますように♪
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