「ベルばらカルタ婦人会」を楽しみ、クリエイティビティや政治に思いを馳せる秋の夜。

こんばんは。栗原貴子です。


先日、拙宅にて「ベルばらカルタ婦人会」を開催した。

婦人会のメンバーは三十路のYちゃん、Mちゃんと四十路の私。ひょんなことから「ベルばらカルタ」の存在を知り、「やろう、やろう」と盛り上がっての開催であった。


が、この3人、誰一人として「ベルサイユのばら」についての知識を持ち合わせていなかった。「かった」というのはYちゃんが購入してくれた漫画を「貴子様、一番にお読みください」と貸してくれたため、今の私は単行本10巻を読了し、造詣が深まっているのである。



ベルばらカルタ婦人会では、お互いに「様」をつけて呼び合っている。


第1回のカルタ会は参加者全員が「アニメの主題歌が唄えます」レベルの知識で取り行われた。元星組男役トップスター、紫苑ゆう様による札読みCD付なので「誰が札読みをするか」という心配も無用である。チャプターがついているので「ランダム再生」にすれば何度でも楽しめますよ、なんなら、ひとりでも遊べちゃいますよ、という至れり尽くせりな逸品なのだ。


「カルタ」という従来であれば「それなりの頭数」が必要であったアナログな遊びに、テクノロジーを融合させることで少人数でのプレイが可能となることに、私はおおいに感動した。

それにしても、私はなぜ現役の少女時代に「ベルサイユのばら」を読んだり、観たりしなかったのだろうか、と考えて気づいた。現役の少女のころの私は「男装の麗人」という設定にグッとこなかったのである。「あの妖艶な美女がじつはおじさん」という歌舞伎にはうっとりしたのに。とんだ性差別である。


現役のおばさんとなった今、私は「ベルばらカルタ」はもちろん、漫画も堪能した。


カルタの絵札は漫画のシーンから抜粋されており、読み札もストーリーに対応して作られている。とはいえ、初回のカルタ会では漫画を未読だったため表面的な理解で「読み札がおもしろい」と感じた。

この絵札の読み札は「スープの薄さがみにしみる」です。


漫画を読み終わった今、「スープの薄さがみにしみる」とこんな白目になっちゃってるオスカル様って!!!と笑った自分を恥じた。


そして、事実を知らなければ「おもしろい」。けれど知れば「笑えるエピソードではない」という、「ベルばらカルタ」の高度な仕掛けに唸った。


じつに、クリエイティビティ!!!


漫画「ベルサイユのばら」は1972年から1973年にかけて『週刊マーガレット』で82回、連載された。週刊とはいえ、連載期間も短く、単行本もわずか10巻。この短い間に生み出された作品が、半世紀近く経った今もこうして人気を博し、新たな商品が生み出されていることにも感銘を受ける。


いい年をした婦人たちが集まって「カルタ会をする」という趣向もまた、じつに楽しかった。大人なので、お手付きをしてもケンカにならないし、負けたといって泣いたりしないのもいい。


子供時代、こうした遊びには「ケンカ」や「泣く」といった感情のぶつかり合いが必ず発生していたものだ。そして私は「お姉さんなのだから、手加減しろ」的なことを言われるのが大嫌いであった。上級生に「混ぜてもらう」ということは、負け戦の可能性が高いということであって、そんなこと最初から「分かっているだろ」と思っていたのである。


今も「大人なのだから手加減しろ」と言われるのが嫌いである。知人の子供とボードゲームをやったときに、小2ぐらいだったその男児が「大人のくせに、手加減しろよ」とほざいたので「あのね、大人がみんな手加減してくれると思っちゃいけないよ」と軽く締めた私である。


しかし、子供というのは不思議なもので「手加減をしない人」である私に何度も、勝負を挑むのである。正直、しつこくてうんざりしてきた。『これは、自分が勝つまで続けようという魂胆か?』といぶかしみ、私はますます「負けるわけにはいかない」と気合を入れたのだった。


そんな私なので「ケンカしない」「泣かない」「しつこくしない」という、大人のカルタ会にすっかり魅了された。現役の子供時代から憧れだった「エレガンスなプレイ」ではないか。楽しさのあまり「もう一回、やらない?」と私がしつこくしてしまったほどだ。


そうか。しつこくしてしまうのは「楽しいから」だったのか、と今更ながら「ごめんね」って感じだが、あのときの小2男子は、たぶん、高校生ぐらいになっているであろうからもう時効だろう。


Yちゃんも、Mちゃんも大いに楽しかったようで「定期的に開催しましょう」ということになった。カルタはYちゃんが購入してくれたが、開催地の拙宅にて保管することにし、私はカルタのマスターが進む助けになるように、と婦人会のグループラインに毎日「本日の1枚」を送っている。


この私の若干、しつこめなふるまいにYちゃんも、Mちゃんも「朝からバタバタしてたので婦人会のラインがきてほっこりしました~」と優しく受け止めてくれている。


働く女性たちはいろいろと大変なので、気の休まる瞬間になれば幸いである。


『週刊マーガレット』連載から半世紀近くの時が立った今なお、かつて少女だった私たちの日常に「楽しみ」をもたらしてくれる、原作者の池田理代子先生の偉大さに圧倒される。


フランス革命の話を描いた「ベルサイユのばら」であるが、ヨーロッパ圏でアニメ放映されていたこともあり、グローバルに話が通じることも付け加えておこう。諸外国でのアニメ放送と日本での放送にタイムラグがあるため、諸外国の20代、30代と「ベルばら談義」で盛り上がれるらしい。男の子も「ママが観ていたから一緒に観てた」というそうだ。


漫画『ベルサイユのばら』を読了した今、本作は現代の日本の姿を「予言」していたのではないか、と感じている。その話はまた、別の機会に書こうと思うが「予言」という視点で眺めると、これからの日本は本当に大変なことになりそうだ、という気がしてならない。


地位や権力、美貌、富、名声。


そうしたことにばかり意識が向き、「現実」が見えなくなっている人たちが、国をどう「ダメにしていくのか」が、漫画なのにやけにリアリティを帯びるのであった。


楽しかったカルタ会なのに、しんみりとした締めくくりになってしまったが、『そんな日もあるわよね』ってことにしよう。


今日も読んでくださって、ありがとうございました。

みなさまの毎日にププッと笑顔があふれますように♪






栗原貴子のでこぼこオンナ道

栗原貴子/編集・ライター、コピーライター フリーランス歴23年。広告、宣伝、啓蒙につながるクリエイティブ制作、コピーライティングが得意。2019年より きもの伝道師 貴楽名義で着付けパーソナルレッスンを中心に活動開始。きもの歴は四半世紀越え。