新型ウイルスに思いを馳せながら旧公衆衛生院の建物で縄文・弥生土器をお触りの巻
こんにちは。栗原貴子です。
新型肺炎ウイルスが大変なことになっているようだ。「ようだ」と他人事のように言ってしまうのは、この1年ほどテレビを観ていないからである。
近所の蕎麦屋の看板に「もり・かけ」と書いてあり、通行するたびに「もりかけ問題はどうなったのか?」と私にリマインドしてくるのだが、テレビを観なくなったきっかけもまた「もりかけ問題」だった。
「ソーリがテレビに映るのが嫌」すぎて観なくなったのだ。嫌な理由は「どこをとっても好みのタイプではない」とだけ言っておこう。
テレビを観なくなってしばらく経ったある日。
ケーブルテレビ会社の人が電波のチェックに来た。久々にテレビの電源を入れると、ソーリが大写しになり、私は心の中で『チッ』と舌打ちした。すると、次の瞬間、画面が真っ黒になった。ケーブルテレビ会社の人がスイッチをオフしたのかと思いきや、そうではなかった。
壊れたのである。
心の中の舌打ちでテレビを壊す、というハリーポッターも真っ青の魔法を意図せず使いこなしてしまったことに動揺した。しかし、ケーブルテレビ会社の人はもっと動揺していた。「あんたのところの社員がテレビを壊した」的な、クレーム案件になることを予想したのだろう。
最後に映ったのがソーリ、という政権の崩壊を予感する壊れ方に満足していた私は、クレームを言うこともなかった。以来、壊れたテレビと暮らしている。
ゆえに、新型ウイルスの報道にも、まったく触れていない。ネットのニュースでちょっと観るぐらい。濃厚接触という言葉にドキドキしたが、私が思っていた接触の仕方とはだいぶ違っていた。手洗いを励行しよう、と思った。
やっと本題だ。
港区立郷土歴史館にいってきた。
ここは昭和13年に竣工された旧公衆衛生院の建物を活用しており、歴史的建造物を満喫するだけでも楽しい。新型ウイルスが猛威を振るっているが、「公衆衛生院」は国民の保健衛生と公衆衛生の普及活動を目的にして国が設立した機関である。
ここで国民の衛生に寄与した先人たちに思いを馳せることで、新型ウイルスを予防するためのご利益的なものも期待できそうだ。
常設展示や特別展を観なければ、入場料フリー。昔の建物の良さを活かしつつも、エレベーターも完備され、お手洗いもとってもきれい。港区の税収の豊かさを感じる。
港区立郷土歴史館には、コミュニケーションルームという無料で展示物を観られるコーナーがある。港区で出土した歴史的価値のある品々や、ご家庭から寄贈された古い家財道具(黒電話や炊飯器、テレビ、氷で冷やす冷蔵庫、ステレオなど)があり、「おさわりOK」という港区の気前の良さを実感するコーナーである。
「触らないでください」という注意書きに触ってから気づく私としては、「おさわりOK」は天国のようだ。学芸員さんも多く、質問にもバシバシ回答してくれる。
大名屋敷跡から出土した江戸時代のお茶碗を手に取り「今、売っていても違和感ないデザインですね」「あ、ゴハン茶碗は意外と軽い! これ、使いやすそう」と楽しんでOKだ。蕎麦のつゆを入れる器って、今、蕎麦屋さんで使っているものと寸法もまったく同じなんだね、という豆知識も仕入れられる。
私のお気に入りは伊皿子貝塚と土器である。
もちろん「おさわりOK」だ。土器は縄文も弥生もある。「土器にも作り手のうまい下手があった」「持ちやすさや使い勝手の良さも研究されていた」といったことを実感する。
円錐型の弥生土器の尖った方を地面にさして固定して、煮炊きをしていた形跡を観ることもできるが(焦げがついている)、ろくろもない時代にきれいな円錐型を作り上げる技術を持っていたのね、と先祖に対するリスペクトもわいてくる。土器を持たせてもらうとき「ドキドキします」と言ってしまい、ダジャレおばさんのようになってしまった。狙っていたわけじゃないけど。手のひらにフィットする持ちやすさに感激した。
「おさわりOK」のコミュニケーションルームには素敵な引き出しがある。
係の方や学芸員さんと一緒に引き出しを開けて浮世絵を堪能することができるのだ。
注) 浮世絵はお触り・撮影禁止です
光による劣化を避けるために、観るとき以外は引き出しに収まっている。
美術館でよく浮世絵展が催されるが、ほとんどの会場が睡魔を誘うレベルに薄暗い。照明による光劣化を防ぐためなので仕方がないが、リーディンググラスを愛用する年代になるとハズキルーペ持参を検討せねばならない暗さだ。照明が薄暗すぎて、浮世絵の色彩を楽しむことも難しい。
しかし、ここでなら明るい照明の元で浮世絵を観ることができる。
絶妙な色彩のグラデーションもよく分かるし、運が良ければ貸し切り状態で学芸員さんによるマンツーマンレクチャーも受けられる。
2000円近い入場料を払って、薄暗い中、眠気をこらえながらゾンビのようにふらふらさまよう観客たちと、おしくらまんじゅうをして”濃厚接触”してしまう心配も無用だ。
コミュニケーションルームの展示品でちびっこに人気なのは黒電話なのだそう。
「生まれた時からスマホ」という世代のコにとって、もはや電話ということすらわからないのだそうだ。学芸員の方と「黒電話といえば、お母さん手作りのカバーがついていましたよね~」という会話から、「黒電話にカバーしていたことが、現代の日本人のスマホカバー好きにつながっているのではないか?」という仮説を立てて楽しんだ。
この仮説はたぶん、合っていると思う。
港区立郷土歴史館はおすすめである。個人的にはミュージアムショップの品ぞろえに改善の余地があると思うのだが、アンケートに記載してきたので改善されるかもしれない。
ちなみに、私の改善案は「常設展や企画展以外は無料なので『こんなに楽しんじゃって、申し訳ないわ。なにか課金しなくては』という気持ちを満たすスポットとしてミュージアムショップを活用すること」であった。
久しぶりに、どうでもいいことを長々と書いてしまった。笑うことで免疫力が高まるのは科学的にも立証されているので、私の雑文を新型ウイルス対策にご活用いただけたらと思う。
今日も読んでくださってありがとうございました。
みなさまの毎日にププッと笑顔があふれますように。
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